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【白い】 あまりの寒さに身震いする。夏に来た時はうだる暑さですっかり体調を崩してしまったものだけど、こう寒いのもまた困る。都会は苦手だ。自分の住む場所とあまりにも違いすぎて、どういう顔をして過ごせばいいのか、いまひとつ分からない。 渡そうと思って渡せなかったものが、実を言うといくらかあった。物質的なものもそうだが、感情やそれを表した言葉が、数えきれないほどに。そうしたものは捨てることも誰かに譲ることもできず、だからといって目に付くと嫌なので、部屋の隅でいつまでも埃をかぶっている。今でも視界の端ですっかり煤けてしまったそれらがちらつくことがあって、その度にあすこには何もないのだと思い込む努力をしなければならない。 何かを残したかった。 もしあの時に何かしら行動できていたら結果は変わっていたのだろうか。仮定してみてもとても想像がつかない。今よりはずっとよかっただろうという夢想は、子供じみていると自分でも思っている。どこか外国の映画で過去が変わったとしてその先の未来が最良とは限らないという話があったが、ひょっとしたら現実でもその通りなのかもしれない。 息を吐くとうすく白い蒸気があがった。それが無性に面白くて、何度も無意味に吐息を漏らす。ため息のように、吸っては吐いて、息が色づくのを見ていた。それは現れてはすぐ消えて、触れることなどもちろん出来るはずのない、けれど確かに存在する不思議な色だった。 雪が降ったのはそれから2週間あとのことで、つくづく祝福されていなかったことを思い知った。そんなものなのだろう、きっと。 (130119 『即興小説トレーニング』お題:謎のプレゼント) |