君はきっと知らないんだろうけどね。
この瞬間が至福のときだなんて。


A


「いつものことながら、おいしそうなお弁当だね春洋はるみちゃん・・・。」

「春洋ちゃんはヤメロ、春洋ちゃんは。」

「うーん、作り手の愛を感じるなぁ。」


春洋の声をまるっきり無視して、野里のりはぼそぼそと独り言のようにつぶやいた。


「あのな・・・・・お前・・・・・」

「マメなお母様だよね、栄養バランスもばっちりだし。」


で。と野里はずいと前に出た。僅かに春洋が後ずさる。


「この卵焼きなんか、欲しかったりするんだけど。」


春洋は呆れたようにため息をつきながら「好きにしろ」と答えた。答えを聞くなり、幸せそうに卵焼きを口に入れた野里を見て、再びため息をつく。


「自分の弁当食えよ。」

「自分で作ってきた弁当なんか、食べてもおいしくないのですよ。」


こともなげに言う野里を見て、春洋は驚いた。野里はプチトマトを口に放り込む。


「そんなに驚くことないじゃない。」

「・・・・・食べれんのか?」


お前が作ったモノなんか。
野里は顔を上げずに小さくつぶやく。春洋に届かないぐらい小さく。


「・・・・・ひどいなぁ。このひときっと忘れてるよねぇ・・・・・」


私が 君を 好きだってこと


「は?なんか言ったか?」

「いーえ。こちらの話でございます。」


笑って、言う。お決まりの台詞。


「あ、忘れてたけど春洋ちゃん。・・・・・付き合う気になりました?」


春洋の答えも、同じ。

あとがき 050704
ごらんの通り、甘さの“あ”の字もございません。
なんだかんだ言いつつ、フェミニストなハルミちゃんは、野里を追い出したりしないのです。そして鈍感です。(笑)
全七話の予定。でも予定は未定。


ありがとうございました。
 
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