「お買い物編」



「ハボック!ハボ!」
「なんすか、そんな大きな声出さんでも、ちゃんと聞こえてますって」
ハボックは隣で買い物カートを押すロイを、呆れたように見やった。
仕事帰りに私服でスーパーに寄った二人は、本日の夕飯の買出しに来ていた。
「面白いものを見つけたぞ!」
スーパーにはあまり来たことがないという上司を引き連れて歩くのは、はっきり言って邪魔でしかなかった。
子供のようにカートを押したがり、目をきらきらさせて辺りを見回している。
ちょっと目を離すと、一人でふらふらどこかに行ってしまうのだ。
「何見つけたんすか?」
レタスを手にとって、重さを比べながら問いかける。するとロイは、得意げにある物を差し出した。


「ジャンだ!!!」


「………」


その手の中には、「ジャン」という名の焼肉のたれ。
「お前、焼肉のたれになってるぞ」
ケラケラとおかしそうに笑うロイに、ハボックは溜息をついた。
「で?もう一つは何を持ってきたんですか?」
リアクションの薄さが気に入らないのか、ロイは少し不機嫌な顔になった。

「コレだ」
次に出されたものは、「JEAN−ジーン−」という名のチョコレート菓子。
「へー…、スペル一緒で読み方違うんすね」
「………」
無言で籠の中にその二つを入れるロイに、ハボックはにやりと笑った。


「それ、買うんですか?」

「…悪いか」

「焼肉のたれなら、もっと大きいのもあるし、チョコレートならまだ家にありますよ?」


わざとらしく言ってやると、ロイは「ふんっ」と顔を背けた。

「金を出すのは、私だ。別に何を買ったって…」

「俺の名前と一緒だからっすか?」

瞬間、ロイの顔に紅が走る。ハボックは気をよくして、彼の顔を覗き込んだ。


「可愛いとこ、ありますね」

「…っさい、バカ犬!」


耳まで真っ赤にして視線を反らすロイに、ハボックはにっこりと微笑んだ。



END





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