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俺は泣きっぱなしだった。マフィアのボスに就任してから、もう何回泣いただろう?この仕事は死が多すぎる。俺は死に直面するたびに泣いていた。昨日初めて会った仲間や、いつも見かける仲間。スパイとして送られた仲間。それはたくさんいるけど、死ぬ数も同じくたくさんで。涙腺が狂ったのではないかとさえ思う。何故泣くのだと聞かれると、困る。それは理由なんかないもので、ぽろぽろぽろぽろ出てきて、ただ、どうしようもないのだ。


とある夏の日だった。

葬式場には背の高い向日葵が裏庭に咲いていた。いまでもその生々しい黄色を覚えている。裏庭にはみんみん、ジリジリと蝉の鳴く大きな声があたりに響いていてじわりと汗が滲む。今更拭う気にもなれない。ただ突っ立っていた俺は亡くなった彼のことを思い出していた。大きな向日葵を思い起こすような明るい人柄で、彼自身も向日葵が好きだと言っていたのを思い出した。この向日葵は厭味だとしか思えない。

「綱吉、」
「なに?

「また泣いてる。」
「しょうがないないんだ、どうしても出てくる」

はいつの間にかやってきて縁側にそっと座り、手招きをした。ここに座れ、と目で言うので近づいてって隣に座ると、そっとハンカチで汗と涙でぐちゃぐちゃな俺の顔を拭ってくれた。

「そろそろ泣き止みなさい。ずっと泣いていたら彼も悲しむわ。‥すっきりした?」

「ん、ありがと」


「今日は暑いね」

「うん‥暑い」

ペタリと背を後ろに倒す。仰向けになると背中が少しヒヤリとした。両手を投げ出していると、気持ちのいいこと。あぁ床が冷たい。の黒いワンピースはとてもよく似合っていて、俺が死んだときもこの服を着ているのかな、とふと思った。死んだらどうなるんだろ。消滅すんのかなぁ。天国と地獄ってあるのかな?まぁ俺は間違いなく地獄に行くのだろうな。・・こんな考え、暗くなるだけだ。何も考えるな、何も、何も・・


「ねぇ…だけは居なくならないでね。」

「約束するわ、きっと綱吉をひとりにはしない。」






とある夏の日だった。

墓場には小柄な向日葵と大きな木がある。みんみん、ジリジリと蝉の鳴く大きな声があたりに響いていてじわりと汗が滲む。はあの日を覚えているよね?忘れたとは言わせないよ。俺を独りにさせないって、言ったよね?俺、ちゃんと覚えているよ。

あのあと、縁側に乗り上げて俺はごろんと身を投げ出して浅い呼吸を繰り返してた。は小さな歌声で、いつかみた映画の、寂しそうな曲調の唄を歌っていた。突然にそれは止まり、「膝枕してあげよっか」って言ったね。俺はの膝に頭を乗せて、いつの間にか寝ていたっけ。みんみん、ジリジリ蝉の鳴く大きな声があたりに響いていて少し、いやかなり煩くて。それでも寝れたのだから、すごいでしょ。


約束、したよね?なのに

君 は 死 ん で し ま っ た じ ゃ な い か 。

墓前には枯れた花が寂しそうに項垂れていた。一週間と空けずにやってくるっていうのに、この場所には夏場は酷く太陽が焼き付ける。(俺もいつの日か入る、墓)


「や、久しぶり。

がいなくなってからもう一年なんだよ、知ってた?

・・またね、ファミリーの葬式があったんだ。

なのにな、俺泣かなかったんだ。

もう何も感じないんだよ、人の死に。

いまじゃ涙も出ないんだ。」


約束なんて、ただの気休めなんだ。君を失ってから、そしてここを訪れるたびに俺の底なし涙は枯れていった。良いのか悪いのか、わかんないよ。途方もない悲しみを、俺は乗り越えたのだろうか。違う違う、そんなことはない。おれはただ逃げただけなんだと思い出す。情けない背中だ。それに比べての背中は美しかったなぁ。もう追いかけることさえ出来ない背中に、俺は何をみたんだっけ?俺は何を思ったんだっけ?いなくなった君に、今更僕は何も残せない。あぁ一体何を?思い出して、思い出して。思い出して!


そんなときにあの曲が聴こえた。否、自分の口から出ていたんだ。あのいつかみた映画の、寂しそうな曲調の唄。




ポロリ、ひとしずくの涙か頬を伝った。


(消える景色のその中に取り残された時 俺の中で一生続く唄)

(0829 みつき)