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「雲雀先生は学校の亡霊なんだって、」


は思い出したように、ふとした瞬間話しだした。まるで独り言みたいに。その生物室には僕としかいなくて、あまりにも静かだ。耳を澄まさなくともかすかな水槽のモーター音が聞こえた。僕はふつふつと泡立つフラスコから目を離し、を見やる。すると癪なことに、こちらを見もせず金魚の尾を追っかけていた。


「…ふぅん、そうなの」
「えぇ、クラスの女の子が言ってた」


「先生、この学校に入ったきり卒業してないんだってね。彼女のお姉さんが先生の後輩だったんだって。そのこね、それから気になって調べたって言ってた。先生、入学した人の名簿に入ってるのにここの卒業してないって。」


いちいち煩い、且、よほど暇だった生徒もいたものだ。でもたしかにその通り。僕はこの学校に依存していて一生ここから出ないつもりだ。「それがなんなのさ」そう言って、またフラスコに視線を向ける。そろそろ沸騰するだろう。「ねぇ先生、なんで?」見なくとも、がこっちを見ているのが感じられた。そのの眼が僕は好きだけど、嫌いだった。(あまりに綺麗だからさ)


「なんで先生は卒業しないの?」

「卒業、してもらいたいの?」


もう、聞いてるのはこっちなのに!すーぐ、はぐらかすんだから。は唇を尖らせて、つかつかと歩み寄ってきた。僕はフラスコを台から降ろし、中身を二つのカップに注いだ。それにティーパックを浸し、紅茶を入れる。


「私、先生にはやく卒業してもらわないと困るの」

「永遠の中学生?ピーターパンのつもり?」


「いつもでも中学生だったら、結婚出来ないじゃない」



「義務教育はもう終わりよ、先生」




(今年の卒業式には君と僕とで)