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双眼をゆっくり開けて、外の明るさを確かめるようにまた閉じた。起きなくちゃいけないかな?いま何時かな?やっぱ起きたくないな。手元にあった毛布を引っ張り込んでぎゅっとすると、お日様のにおい。あったかいと思ったら私が横たわっている場所は、あぁ。そういえば窓辺だったと思い出す。

「まだ・・こうしてたい・・・」

薄目を開けて、私自身も日に当たるように体を引きずると目に眩しいくらいの光が飛び込んできた。思わずぎゅっと瞑る。










「ねぇ、綱吉!いつまでこうしてればいいの?」
「まーだ、だめ。はせっかちだね」

「ちぇ、何企んでるんだか!」
「ふふっ もうすぐ、わかるよ」

目を瞑っているといろいろな音やにおいに敏感になるっていうのは本当で、私の耳にはかさかさという音と、鼻をくすぐる甘い匂いがした。それに、いつもは仄かな、綱吉の石鹸のにおい。


、目をあけて?」









またずりずりと体を引きずる。今度は顔に日光が当たらないところに移動して、ゆっくり目を開ける。四肢にやんわりとした暖かみ。それはまるで綱吉みたいだなぁと思った。時々ふたりで昼寝するとき、後ろからぎゅっとしてもらう。その時の綱吉の体温に似ている。

「綱吉に、あいたいよ」



顔いっぱいに日光を浴びたとき、綱吉のことを思いだした。あの日と似ていたシュチュエーション。ずっと目を瞑っていたから、開いたときに差し込む日光が眩しくて何だかくらくらした春の日、綱吉はプロポーズしてくれた。ずっと一緒にいよう、って。なんだかいじわるしてみたくなって、今までだってずっと一緒にいたじゃない!って言うとじゃぁ、と照れたように、はにかみ笑いで「これからも俺の側から離れないでください。」って。

嬉しすぎて出てきたなみだに綱吉の顔がゆがむのだけれど、お日様の優しい眼差しがなみだをきらきらするガラス玉に変えてくれたあの日。
本当に、小さなガラス玉に閉じこめておきたいと思うほど、美しかった。


「綱吉、はやく帰ってきて。ぎゅってして、はやく」




カチャ、キィィ、 バタン。

はっ、と体を起こす。今の音は!きっと綱吉が帰ってきたんだ、玄関の開ける音だもの!飛び起きてダッと駆け出す、ルームスリッパはほっぽりだしていたから裸足のまんま。綱吉がみたら苦笑いで子供じゃないんだから、とか言いそうね。

タッタッ、カーブのある階段をも駆け下りるとすぐそこは玄関で、足下ばかり見ていたから着地してすぐ顔を上げる。「おかえりなさい!」


「・・・ただいま?」

「!!!あれっ」


驚いて目をぱちぱちさせると不服そうな顔で「綱吉じゃなくて残念だったな」と言い放った、彼はリボーン君。残念!これじゃ、ぎゅっとしてもらえないじゃないの・・。


「はぅ、リボーン君かぁ・・」
「んだと、わざわざ会いに来てやってんだから礼くらい言え。」

「うん、ありがとう、リボーン君!」
「…エスプレッソ。」

「はいはーい!」
(ったく…)



「それで、今日はどうしたの?」居間は少し奥にあるからちょっとした廊下で聞いてみる。するとリボーン君はじっと私を見ていて、少しどきっとした。やっぱり顔、整っているなぁ。リボーン君は静かに口を開く。

「なぁ、それより今ここにいるのが綱吉じゃなくて俺で良かったな。」
「え?」
「そんな格好じゃダメツナも呆れるぞ」

「?」そう言われて自分の格好をみると、白いワンピースの肩ひもがだらしなく腕に垂れていて。「これ、寝癖だろ?」髪を引っ張られる。そう言われて髪を触ると指が引っかかった。

「くくっ、マヌケだな 」「う、うるさーい!年上をからかわないでよね!」「ボスの奥さんだしな」「そうそう、」「俺はそう思ってねぇけど」「ん?なーに?」「別に、」「・・ふーん」




「で、だ。」

俺は今日、お前に話さなきゃならないことがある。と一口のコーヒーを飲んでリボーン君は真面目で、無表情な顔でいった。こういう時のリボーン君の話す内容はろくなものじゃないって、経験で分かるからうっと息がつまる。「な、何でしょう?」


「綱吉は用があって、今日からイタリアにいく。」

「えぇぇぇー!そ、それってどのくらい?」

「早くて、2週間 だな」

「なっ・・・長いよ・・・もう行っちゃった?」

「あぁ、さっきな。それで連絡するように頼まれたんだ」



はぁぁ、と大きなため息をついて「まぁ しょうがないか」と呟いた。リボーン君は話が終わるとなんとも気楽そうな顔で、一つチーズクッキーをつまむ。あぁ、リボーン君が綱吉だったら。膝に手を置いて、首を項垂れる。

そしたらせめて、笑顔でお見送りだけでも出来るのに。(ぎゅっとしてもらうのも忘れずに!)



「・・しょうがなくも、ないぜ?」

コーヒーの残りを飲み干したリボーン君がにやりと笑った。それをみてまた、しょうもないこと言い出すんだわ、このこ・・・と分かってしまう。音もなく、カップを置くと視線ががっちり私をとらえた。


「今回は俺の頼みでイタリアに行ってもらった、
だからもし・・俺が行かなくていいって言ったら・・綱吉は行かなくてすむんだぜ?」

、なぁ。俺に、お願いしてみろよ。かわいく、な」


この悪魔め・・・!眉尻をさげて、いじけたような顔を見せるとさらに意地悪そうな目をする。10歳以上年が離れているのに、どうしてこの子は、もう!


「・・しかたないんだもん、お仕事なんだから・・いいよ、待ってる」

「マイナス20点」


ぱっと、悪魔笑いがリボーン君の顔から消え、最初のような不機嫌になった。あぁもう、よく分からないな。椅子から立ち上がり、ジャケットを羽織る。帰り支度をしているようだ。「ねぇ、リボーンくん」「あん?」


「教えてくれてありがとう、また遊びにきてね!」

「ばーか、夫の留守中に男なんか誘うんじゃねぇよ」


「なっ!違うよばかぁ!」

「へいへい、」



帽子を手に引っかけて、じゃ、ごちそうさん。ドアに手をかけた。「もう帰っちゃうの?」と聞くと、もうすぐ俺も仕事に行くから。と一言。「そっかぁ・・」「んな淋しそうな顔すんな、また来てやるよ」そういってくしゃ、と頭をなでられた。年下のくせに、私より大きな手のひらはやっぱり綱吉に似ている。玄関まできて「じゃあ行ってらっしゃい、ダーリン!」と冗談でいう。





「ん、行って来ます」

愛しいものを見るかのような目で、私を見つめるリボーン君。頬に手を添えられて、近づいてくる顔。えっえぇぇ・・・・・!
ぎゅっと目を瞑る、あれさっきから私、目を瞑ってばっかりだね。ふわり、男物の甘い香水のかおり。




「ばーか、キスなんて しねぇよ」






(もう俺は遠慮しねぇけど)