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「山本、元気出せ!」

ほらよ、と差し出されたパック牛乳は水滴を纏っていた。






初めて、振られた。 なんでだか、俺は幼稚園ぐれぇの頃からそこそこモテるほうで、 今まで付き合った女の子との別れを切り出したのは全部俺だった。俺の役目だった。 それがおととい、まさかの初めてのお別れを言われた。 「だって、武。私のこと好きなのか分かんないんだもん・・・」 「でもさっ、これからも友達としてよろしくね?」「ばいばい、!」 そーかよそーかよ。あぁ、でも確かに。確かに君のこと好きだったか、 正直微妙だったりする。だって女の子なんて、俺の中ではそんなもんなんだ、ごめんな。 でもそりゃ俺だって健康な高校生だからいろんな欲が渦巻いてるけど、 やっぱり野球とダチとが一番になってしまう。俺っておかしいのかなぁ? なんか頭がぼーっとするけど俺は其処まで傷付いてはなかった。割と平常。 あー、なんかどうでもいいか。高校生の恋愛なんてごっこ遊びだよな。 うん、俺もいい経験になったよな。まぁ次の時はうまくいくよう願っておこう。


山本がふられたってクラスの女子、 学年の女子、山本ファンクラブの乙女、先輩方、その他諸々が話していたから、 その全貌を誰もが知っていた。可哀想な元彼女!山本の彼女だったばっかりに 噂にされて、ファンクラブの乙女達に日々睨まれてることだろう。 私は山本にあまり同情しなかった。振られたのはヤツだっていうのに! ちょっとだけいい気味って思っている自分が嫌なやつみたいだけど、 私ってそういう性格だからしょーがない。・・・・でも、いつもに増して授業中ぼーっと されるとなんとなく気になっちゃうってのが、隣の席のディスティニー! だからそっと盗み見たんだけど、お昼の時間もぼやぼやしてた。 隣のクラスから沢田くんがやってきてお弁当を広げると、チャイムと同時に走って 出て行った獄寺くんがハァハァ言いながら「十代目!プリン確保しましたっ!」って 飛び込んでくる。いつもならそんな忠犬獄寺君をからかって自分もお弁当を広げるって、 私知ってるんだからな。でもただ何となくおかずを口に運んでただけ。 そんなにショックだったわけ?私はそっちのほうに集中していたから一緒に食べていた 友達にこっそり「にしし、山本が気になるのー?」って言われて思いっきり首を横にふった。 断じて違う!


、ジュース買いにいこっ」「あ、うん」 席を立つとき、また山本を見た。沢田君も、珍しいことに獄寺君も困ったような顔を していてなんだかカワイソウ。財布を持って先にいった友達を追いかけた。

−ガコン。
ジュースが落ちてきた。「んしょっと。はなんにするん?」友達はプシュッといい音をたてて開いたコーラを 一口飲み聞く。なんて答えようか、うーんって唸りながらも考えていたのは山本のこと だったものだから「あ。」いつのまにかパック牛乳を選んでいた。

(思いっきり山本の好物じゃん・・・・どうかしてる私)

「へぇーが牛乳なんて珍しー!なに、背でも伸びたいワケ?」
それにははっと苦笑してストローを刺すか刺さないか迷い、結局開けなかった。

それから教室に戻ったのは昼休みも終わるぎりぎりの頃だった。 職員室に寄ったり、他クラスに寄ったりとまぁよそ見していたから。 教室のドアをガラガラと開けてもらうと、そこでやっぱり私の目に一番最初に 入ってきたのは山本で、した。


(なーんでこんな気になってるんだ、やつがそんなに好きか私は)
(あれ今なんつった?好き?ありえねー、私が好きなのは愛するジョニーだけよ!)
(うん、絶対違う違う。)

でもチラッと見ると頬杖付いて伏せ目がちのヤツの横顔見ると、 自然にため息が出るほど切なくなる。まだ手をつけてない牛乳が、 私の手の中で汗をかき始めていた。


「山本、元気だせ!」
ほらよ、そういって差し出したのは例の牛乳。 山本のくりっとした目を自分に向けられじっと見つめられた。 うっとなって目をそらしたかったけど、ヤツの目が離してくれない。 そんで不意ににっと笑ってサンキュな、と牛乳は受け取ってもらえた。

ほっと胸をなで下ろし、席に座った。なんだかもやもやしてたものが 少し晴れた気がする。「なー、さぁ」

「俺って・・・」


「あー、やっぱなんでもない」
「なにそれ!?」



(惚れっぽいって思われたら嫌だから言えなかった、君が好きって)
(ほんとうは私、ずっと前から気づいてたのかもね、君が好きって)